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目次(8件)

収益率の幾何リンク計算(Geometric Linking)


本記事では、幾何リンク計算(Geometric Linking)(単に「リンク計算」とも呼ぶ)についてまとめる。ファンドのパフォーマンス計測で広く用いられる基本的な計算手法である。

計算方法

複数期間の収益率を連結して累積収益率を算出する計算式である。各期間の収益率に1を足してすべて掛け合わせ、最後に1を引く。

3日間の累積収益率を求める計算式と数値例

基本式は以下の通りである。

(1 + 1日目の収益率) × (1 + 2日目の収益率) × (1 + 3日目の収益率) - 1

例えば、日次収益率が「1日目:+2%」「2日目:-1%」「3日目:+3%」だった場合、数値を当てはめると以下の計算となる。

(1 + 0.02) × (1 - 0.01) × (1 + 0.03) - 1 = 1.02 × 0.99 × 1.03 - 1 = 1.040094 - 1 = +0.040094(パーセント換算で +4.01%)

期間が月次や年次、あるいはさらに長い日数になっても、同じように「1を足して掛け合わせ、最後に1を引く」処理を行う。

計算手順

ステップ 処理内容 意味
1. 資産倍率にする 各期の収益率に 1 を足す(例:+5% なら 1 + 0.05 = 1.05) 元本1に対する期末の資産倍率
2. 倍率を掛け合わせる 各期の倍率をすべて掛け算する 期間全体を通した最終的な資産倍率
3. 収益率に戻す 掛け合わせた結果から 1 を引く 元本1を差し引いた純粋な増減率

どんなときに使うか

日次から月次、月次から四半期・年次・設定来など、複数期間の収益率をまとめて累積収益率を算出する際に使用する。パフォーマンス計測や要因分析など、資産運用の現場で広く用いられる基本的な計算手法である。特に時間加重収益率(TWR)では、各評価期間の収益率を幾何リンクすることで、複数期間にわたる運用成果を算出する。

なお、分配金再投資基準価額などが手元にある場合は、各期のリターンを掛け合わせなくても『(期末値 ÷ 期初値)- 1』で累積収益率を直接求めることができる(詳細は別章で解説)。幾何リンクは、すでに算出された日次・月次などの収益率データのみを使って長期リターンを合成する場合や、ベンチマークリターンの合成など、幅広い場面で用いられる計算である。

計算の仕組み(100万円での残高推移例)

幾何リンクが必要となる理由は、各期の運用結果によって手元の資産残高が増減し、その増減した後の残高に対して次の期間の収益率がかかる(複利効果が働く)ためである。各期の収益率を単純に足し合わせた場合、実際の資産残高推移と乖離が生じる。

これは評価の単位が日次・月次・年次のいずれであっても全く同じである。

パターン1:日次(3日間の残高推移)

元本100万円で運用を開始したとする。

1日目(+1.0%):100万円の1%(+1万円)が増加し、残高は101万円となる。 2日目(+2.0%):増えた後の101万円に対して2%(+2.02万円)が増加し、残高は103.02万円となる。 3日目(-2.0%):103.02万円に対して2%(-2.0604万円)が減少し、残高は100.9596万円となる。

3日間の実際の運用成果は、100万円が約100.96万円になったため「+0.96%」である。

計算手法 計算式 3日間の結果 実際の残高との整合
単純な足し算 1.0% + 2.0% + (-2.0%) +1.00% 不整合(約404円分過大評価)
幾何リンク (1 + 0.01) × (1 + 0.02) × (1 - 0.02) - 1 +0.96% 整合(約100.96万円と一致)

日々のわずかな損益であっても翌日の運用残高に反映されるため、日次であっても足し算ではズレが生じる。

パターン2:月次(3ヶ月間の残高推移)

元本100万円で運用を開始したとする。

1ヶ月目(+10.0%):100万円の10%(+10万円)が増加し、残高は110万円となる。 2ヶ月目(-10.0%):110万円に対して10%(-11万円)が減少し、残高は99万円となる。 3ヶ月目(+5.0%):99万円に対して5%(+4.95万円)が増加し、残高は103.95万円となる。

3ヶ月間の実際の運用成果は、100万円が103.95万円になったため「+3.95%」である。

計算手法 計算式 3ヶ月の結果 実際の残高との整合
単純な足し算 10.0% + (-10.0%) + 5.0% +5.00% 不整合(約1.05万円分過大評価)
幾何リンク (1 + 0.10) × (1 - 0.10) × (1 + 0.05) - 1 +3.95% 整合(103.95万円と完全一致)

足し算では「+5.0%(105万円相当)」に見えるが、手元残高は103.95万円にしかならない。

パターン3:年次(3年間の残高推移)

元本100万円で運用を開始したとする。

1年目(+20.0%):100万円の20%(+20万円)が増加し、残高は120万円となる。 2年目(+10.0%):120万円に対して10%(+12万円)が増加し、残高は132万円となる。 3年目(-10.0%):132万円に対して10%(-13.2万円)が減少し、残高は118.8万円となる。

3年間の実際の運用成果は、100万円が118.8万円になったため「+18.80%」である。

計算手法 計算式 3年間の結果 実際の残高との整合
単純な足し算 20.0% + 10.0% + (-10.0%) +20.00% 不整合(1.2万円分過大評価)
幾何リンク (1 + 0.20) × (1 + 0.10) × (1 - 0.10) - 1 +18.80% 整合(118.8万円と完全一致)

日・月・年の単位に関係なく、「前の期間で増減した後の残高に対して、次の増減率がかかる」という事実自体は全く変わらない。そのため、どの時間軸であっても計算方法はすべて同じ「1を足して掛け合わせ、最後に1を引く」となる。

Excelでの実装例

月次収益率が並んだセル範囲から四半期(3ヶ月間)の累積収益率を求める構成例である。

シート構成例

セル A列(年月) B列(月次収益率)
1 年月 月次収益率
2 2026年1月 5.0%
3 2026年2月 -2.0%
4 2026年3月 3.0%
5 四半期累積 =PRODUCT(1+B2:B4)-1

※セルB2〜B4は表示形式をパーセントに設定しているが、セル内部の実際の数値は小数(0.05、-0.02、0.03)である。

※セルB5の計算結果は 0.05987... となり、表示形式をパーセントにすることで +5.99% と表示される。

関数の選択肢

1. PRODUCT関数

=PRODUCT(1+B2:B4)-1

幾何リンクの基本式である「各収益率に1を足して掛け合わせ、最後に1を引く」という計算を、そのままExcel上で表現できる方法である。Excelのバージョンによっては配列数式(Ctrl + Shift + Enter)としての確定が必要となる場合がある。

2. 作業列 + PRODUCT関数

C列に作業列を設け、各行で「1 + 収益率」(例:C2に =1+B2)を求めておき、その積をPRODUCT関数で計算する方法である。

=PRODUCT(C2:C4)-1

各期の資産倍率が表の上で目視できるため、計算過程をシートに残したい場合によく使われる。

3. FVSCHEDULE関数

=FVSCHEDULE(1,B2:B4)-1

元本1に対して利率の範囲(B2:B4)を複利適用した将来価値を算出する関数である。作業列を使わずに1セルで計算できる別の方法である。

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