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モーゲージ債・定時償還債のOriginal FaceとCurrent Faceとは?額面・単価・ファクターの関係を解説


同じ債券の同じ取引なのに、OMSでは額面1億円、バックシステムでは8,000万円。数量が一致しなくても、どちらも正しい場合がある。さらに、単価の表示基準まで異なることもあるが、売買代金や受渡金額は一致する。

資産運用会社でモーゲージ債(MBS)や定時償還債を扱う場合、このようなことが起こり得る。その理由は、元本償還前の額面を表す「Original Face」と、元本償還後の額面を表す「Current Face」という2つの概念があるためだ。

資産運用会社では、注文・約定などを管理するOMS(Order Management System:注文管理システム)と、決済・残高・会計処理などを担うバックシステムを利用している。OMSではOriginal Face、バックシステムではCurrent Faceを基準に数量を管理するケースがあり、両者の違いを意識する必要がある。

本記事では、Original FaceとCurrent Faceの違い、ファクターの仕組み、単価と受渡金額の関係を整理したうえで、OMSとバックシステムの約定連携や残高照合における注意点を解説する。

1.モーゲージ債や定時償還債では、元本が段階的に償還される

一般的な固定利付債券では、満期まで利息を受け取り、満期日に元本がまとめて償還される仕組みが多い。一方、モーゲージ債や定時償還債では、満期前にも元本の一部が償還される。

モーゲージ債(MBS:Mortgage-Backed Securities) は、住宅ローン債権などを裏付けとする証券だ。住宅ローンの借り手は毎月元本を返済するほか、住宅の売却や借り換えなどに伴い、予定より早く返済することもある。そのため、MBSでは裏付けとなる住宅ローンの返済状況などに応じて元本が償還される。償還額や時期は商品設計によって異なり、期限前返済の状況にも影響される。

一方、定時償還債 は、あらかじめ定められたスケジュールに従って、元本の一部を定期的に償還する債券だ。

例えば、額面1億円の定時償還債について、毎年2,000万円ずつ元本が償還されるとしよう。

時点 元本償還額 元本残高
発行時 ― 1億円
1年後 2,000万円 8,000万円
2年後 2,000万円 6,000万円
3年後 2,000万円 4,000万円
4年後 2,000万円 2,000万円
5年後 2,000万円 0円

1年後には、当初1億円だった元本が8,000万円まで減少している。このとき、債券の額面を表す方法として、当初の1億円と償還後の8,000万円という2つの基準が存在する。

2.Original FaceとCurrent Faceとは?

元本が段階的に償還される債券では、額面を表す概念としてOriginal FaceとCurrent Faceが使われる。

用語 日本語 意味
Original Face 当初額面 元本償還前の額面
Current Face 実質額面 元本償還を反映した現在の額面
Factor ファクター 当初額面に対する実質額面の割合

日本証券業協会の「PSJモデルガイドブック」でも、Original Faceを「当初額面」、Current Faceを「実質額面」としている。

例えば、当初額面1億円の債券について、元本の20%が償還されたとしよう。

項目 金額
Original Face(当初額面) 1億円
償還済み元本 2,000万円
Current Face(実質額面) 8,000万円

Original Faceは元本償還前の額面を表すため、元本償還だけでは通常変わらない。ただし、売買によって保有数量が増減した場合には、それに対応するOriginal Faceも増減する。一方、Current Faceは元本償還に伴って減少していく。

なお、Original Faceは必ずしも債券全体の発行総額を意味するわけではない。保有ポジションについてOriginal Faceという場合、そのポジションに対応する元本償還前の額面を指す。

3.ファクターとは?Original FaceとCurrent Faceを結び付ける係数

Original FaceとCurrent Faceを結び付けるのが、ファクター(Factor)だ。ファクターは、当初の元本を1とした場合、現在どれだけの元本が残っているかを示す。

計算式は次のとおりだ。

ファクター = Current Face ÷ Original Face

例えば、Original Faceが1億円、Current Faceが8,000万円なら、

8,000万円 ÷ 1億円 = 0.8

となる。

反対に、ファクターが分かれば、Original FaceとCurrent Faceを相互に変換できる。

Current Face = Original Face × ファクター

Original Face = Current Face ÷ ファクター

ファクター0.8なら、当初の元本の80%が残っていることを意味する。

定時償還債はファクターがきれいな数字になりやすい

定時償還債では、あらかじめ定められたスケジュールで元本が償還されるため、ファクターが0.8、0.6、0.4といった比較的きれいな数字になることがある。ただし、元本償還スケジュールによっては小数点以下の桁数が多くなることもある。

モーゲージ債はファクターの端数が多くなりやすい

一方、モーゲージ債では、多数の住宅ローンの元本返済や期限前返済の影響を受けるため、ファクターが小数点以下の細かい数字になることが多い。

債券 ファクターの例
定時償還債 0.80000000
モーゲージ債 0.82345678

※いずれも説明用の仮定値。

ファクターの小数点以下の桁数が多い場合、額面や金額を計算する際の端数処理にも注意が必要になる。特に、OMSとバックシステムでファクターの保持桁数や丸め方法が異なると、Current Faceや売買代金に端数差が発生することがある。同じファクターを使用しているかだけでなく、何桁まで保持し、どの段階で端数処理するかも重要だ。

4.Original FaceとCurrent Faceでは単価も異なることがある

ここからは、OMSとバックシステムで額面・単価の表示が異なるケースを考えよう。OMSではOriginal Face、バックシステムではCurrent Faceを数量として管理しているものとする。

次の条件で債券を購入したとしよう。

項目 数値
Original Face 1億円
ファクター 0.8
Current Face 8,000万円
Current Face基準の単価 102円

債券単価を額面100円当たりの価格とすると、Current Face基準で計算した売買代金は次のようになる。

8,000万円 × 102 ÷ 100 = 8,160万円

では、Original Faceの1億円を基準に、同じ売買代金を表現するなら単価はいくらになるだろうか。答えは81.6円だ。

1億円 × 81.6 ÷ 100 = 8,160万円

つまり、次の2つは同じ取引を表している。

項目 Original Face基準 Current Face基準
額面 1億円 8,000万円
単価 81.6円 102円
売買代金 8,160万円 8,160万円

ここでいうOriginal Face基準の単価81.6円は、同じ売買代金をOriginal Faceだけで計算できるように換算した値であり、必ずしも市場で提示される取引単価を意味するものではない。

両者の単価は次のように換算できる。

Original Face基準の換算単価 = Current Face基準の単価 × ファクター

Current Face基準の単価 = Original Face基準の換算単価 ÷ ファクター

ただし、Original Faceを数量として管理するOMSでも、単価はCurrent Face基準の102円で保持する場合がある。その場合は、Original Faceにファクターと単価102円を掛けることで売買代金を求められる。

1億円 × 0.8 × 102 ÷ 100 = 8,160万円

したがって、OMSがOriginal Faceを数量として扱うからといって、単価も必ずOriginal Face基準の81.6円になるわけではない。

数量がOriginal FaceかCurrent Faceかという違いと、単価がどちらの額面を基準としているかという違いは、分けて考える必要がある。

5.額面と単価が異なっても、受渡金額は一致する

債券取引では、売買代金に加えて経過利息などを考慮する必要がある。ここでは、先ほどの売買代金8,160万円に対し、経過利息が40万円発生すると仮定しよう。

項目 Original Face基準 Current Face基準
額面 1億円 8,000万円
単価 81.6円 102円
売買代金 8,160万円 8,160万円
経過利息 40万円 40万円
受渡金額 8,200万円 8,200万円

手数料・税金などのその他の調整額を考慮しない場合、受渡金額はどちらも8,200万円となる。

ここで、債券取引で使われる「クリーンプライス」と「ダーティプライス」についても整理しておこう。

  • クリーンプライス(Clean Price):経過利息を含まない債券価格
  • ダーティプライス(Dirty Price):経過利息を含む債券価格

一般に、債券の受渡金額は、クリーンプライスから計算した売買代金に経過利息などを加えて求めることができる。ダーティプライスは、クリーンプライスに、同じ額面基準で表した経過利息相当額を加えたものだ。

なお、Original Face基準とCurrent Face基準の違いは、クリーンプライスとダーティプライスの違いとは別の概念である。

重要なのは、額面と単価の表示基準が異なっていても、同じ取引条件であれば、売買代金や受渡金額は一致するということだ。

6.OMSからバックシステムへの約定連携では何が起こる?

資産運用会社では、OMSで成立した約定をバックシステムへ連携し、決済や残高管理などの処理を行う。ここでは、OMSがOriginal Face、バックシステムがCurrent Faceを数量として管理するケースを考える。

例えば、ファクター0.8の債券について、OMSでOriginal Faceが1億円の取引が成立したとしよう。OMSからバックシステムへ約定を連携するとき、バックシステムで管理するCurrent Faceは次のように換算される。

1億円 × 0.8 = 8,000万円

両システムの約定データを比較すると、次のようになる。

項目 OMS バックシステム
数量基準 Original Face Current Face
約定数量 1億円 8,000万円
ファクター 0.8 0.8
単価 102円または81.6円 102円
売買代金 8,160万円 8,160万円
経過利息 40万円 40万円
受渡金額 8,200万円 8,200万円

※102円はCurrent Face基準の単価、81.6円はOriginal Face基準の換算単価。経過利息は同額とし、手数料・税金などは考慮しない。

OMSではOriginal Faceの1億円を数量として保持し、バックシステムではファクターを反映したCurrent Faceの8,000万円を数量として保持する。

単価については、OMSでもCurrent Face基準の102円を使う場合がある。その場合、OMSではOriginal Faceとファクター、単価を組み合わせて売買代金を計算する。一方、Original Face基準の換算単価81.6円を使えば、ファクターを別途掛けなくても同じ売買代金を求められる。

いずれの方式でも、ファクターを適切に反映していれば、同じ取引の売買代金・受渡金額は一致する。

受渡日によって適用するファクターが変わる

さらに重要なのが、取引の受渡日だ。モーゲージ債や定時償還債では元本償還が進むため、受渡日に対応するファクターが異なることがある。

OMSには、銘柄ごとに定められたルールに従い、受渡日に対応するファクターを適用してCurrent Faceや売買代金などを計算するものがある。

例えば、同一銘柄について、受渡日が異なる2つの取引条件を比較してみよう。

項目 10月20日受渡 11月20日受渡
Original Face 1億円 1億円
ファクター 0.80 0.75
Current Face 8,000万円 7,500万円
単価 102円 102円
売買代金 8,160万円 7,650万円

※単価はどちらもCurrent Face基準の102円と仮定し、経過利息は含めていない。異なる受渡日の取引条件を比較した説明用の例である。

この場合、OMSで管理するOriginal Faceはどちらも1億円だが、受渡日に適用するファクターが異なるため、バックシステムに連携されるCurrent Faceは異なる。 10月20日受渡なら8,000万円、11月20日受渡なら7,500万円だ。

また、Original Faceを数量として管理するOMSでも、受渡日に対応するファクターを使えば、Current Face基準の単価102円から売買代金を計算できる。

一方、Current Faceを数量として管理するバックシステムでは、OMSから連携された受渡日対応のファクターを使って、Original FaceからCurrent Faceへ約定数量を換算するケースがある。なお、約定時の数量換算と、その後の元本償還に伴う保有残高の更新は別の処理であり、区別して考える必要がある。

ただし、MBSではファクターが未確定の場合もあり、実績ファクター、予定ファクター、予想ファクターの違いにも注意が必要だ。

元本償還の発生日、ファクターの基準日、適用開始日、受渡日が必ずしも同じとは限らない。実際に適用するファクターは商品ごとのルールやシステムの仕様によって決まる。また、受渡日が変われば、経過利息などの取引条件にも影響する場合があるため、単純にファクターだけを変更すればよいとは限らない。

7.OMSとバックシステムの残高照合でも額面の基準を揃える

Original FaceとCurrent Faceの違いは、約定連携だけでなく、保有残高の照合でも重要になる。

例えば、同じ銘柄について次のような残高があったとしよう。

項目 OMS バックシステム
保有数量 1億円 8,000万円
数量基準 Original Face Current Face

単純に数量を比較すると2,000万円の差がある。しかし、ファクターが0.8であれば、

OMSのOriginal Face 1億円 × 0.8 = 8,000万円

となり、バックシステムのCurrent Faceと一致する。残高照合では、どちらか一方の額面基準へ統一してから比較する必要がある。

元本償還が発生すると、バックシステムのCurrent Faceが減少する

さらに、元本償還によってファクターが0.8から0.75へ変わったケースを考えよう。

項目 償還前 償還後
Original Face 1億円 1億円
ファクター 0.80 0.75
Current Face 8,000万円 7,500万円

売買が発生していなくても、Current Faceは500万円減少する。

OMSがOriginal Faceで残高を管理している場合、元本償還だけでは保有数量は通常変わらず、1億円のままとなる。一方、Current Faceで数量を管理しているバックシステムでは、元本償還を反映した保有数量が8,000万円から7,500万円へ減少する。

つまり、売買が発生していなくても、バックシステムの数量だけが変化する場合がある。

ただし、OMSでOriginal Faceを保持している場合でも、元本償還によるCurrent Faceの変化や元本回収額を把握する必要がある。また、バックシステムでは実質的な元本残高の減少に加え、償還部分に対応する簿価の減額など、必要な会計処理が行われる。

残高照合ではファクターの適用時点にも注意する

残高照合では、同じ時点の残高と、それに対応するファクターを用いて比較することが重要だ。

例えば、OMSのOriginal Faceが1億円、バックシステムのCurrent Faceが7,500万円になっているとしよう。バックシステムでは元本償還後のファクター0.75が反映されている一方、OMS側の残高照合で償還前のファクター0.80を使っていた場合、次のようになる。

項目 OMS側の照合計算 バックシステム
Original Face 1億円 1億円相当
使用ファクター 0.80 0.75
Current Face 8,000万円 7,500万円

この場合、売買がなくても500万円の数量差が発生する。これはOriginal FaceとCurrent Faceの基準が異なることによる差ではなく、使用したファクターの適用時点が異なることによる差だ。

OMSはOriginal Face、バックシステムはCurrent Faceで数量を管理している場合、元本償還の反映タイミングによって、両システムの残高が異なって見えることがある。そのため、残高照合では単にファクターで数量を変換するだけでなく、双方が同じ時点の元本償還を反映しているかを確認する必要がある。

8.まとめ:額面と単価が違っても、同じ取引を表している

モーゲージ債や定時償還債では、元本が段階的に償還されるため、Original Face(当初額面)とCurrent Face(実質額面)という2つの額面基準が存在する。両者はファクターによって相互に変換できる。

OMSではOriginal Face、バックシステムではCurrent Faceを基準に数量を管理するケースがあり、同じ債券でもシステムによって表示される額面が異なる場合がある。また、額面の基準が異なれば、対応する単価も異なることがある。しかし、同じ取引条件を表していれば、売買代金や受渡金額は一致する。

さらに、元本償還が進む債券では、受渡日に対応するファクターが変わるため、Original Faceで数量を管理するOMSでも、ファクターを使った売買代金の計算が重要になる。一方、Current Faceで数量を管理するバックシステムでは、元本償還によって保有数量そのものが減少する。残高照合では数量の基準を統一するとともに、ファクターの適用時点や元本償還の反映状況を揃える必要がある。

Original FaceとCurrent Faceの違いを理解することは、モーゲージ債や定時償還債の約定、決済、残高管理を正しく理解するための基本となる。


参考資料

※記事中の数値は、仕組みを理解するための仮定値です。OMSやバックシステムの数量・単価・ファクターの管理方式は、利用する製品や設定によって異なります。

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